私の鑑賞教育(2011年度)

私の鑑賞教育

東京都立大江戸高等学校 森田

1.はじめに
「鑑賞教育」というものを、まともに受けた記憶がない。美術史の学習はおろか、美術館に行ったことすらなかった私の中高生時代は、実技指導が中心であった。
美術作品に触れる機会は、教科書に載っている写真を眺めることと、美術室に並べられた同級生の作品をこっそり見ること、TVや本から得る知識のみ。しかし、作品を「見る
という楽しさは知っていたのだと今になって思う。それが自身の勉強につながることも。
不登校経験者の多いチャレンジスクールで現在、私が担当している芸術科目は『美術1』・『日本画』・CG制作中心の『コンピュータ造形』・講義とテスト中心の『色彩』。その中の、最初に挙げた3科目にて必ず行っている鑑賞方法について今回は述べさせていただく。すでに実践されている方も多いであろう「スタンダードな」方法なので、もしアドバイスやご助言があれば頂きたい。

2.実践内容
●映像メディアを使用した鑑賞
大きな課題の導入や合間に、テレビ番組や美術映像などを鑑賞させている。
だいたい30分〜60分の映像であるが、生徒が集中できる時間はそう長くはない。そこで、「クイズ」などと称したワークシートを作成し、問題を解かせながら進めている。最後は答え合わせをしながら、その時代の特徴や制作方法、関連するアーティストなどについて補足説明する。



ワークシート作成の手順は以下の通り。
1.課題に即した映像や、生徒の興味関心を引く内容の映像を見つける
以下の点に注意しながら、メモを取りながら鑑賞する。
・どんな問題にすれば、知識が身につくか?
・ 難しすぎず、簡単すぎず。
・書く作業が、肝心の鑑賞の邪魔にはならないか?
2.一度作成したワークシートを、(生徒の気分で)実際に解きながら鑑賞する
以下の点に注意しながら、訂正をしてゆく。
・様々な生徒の取り組みの様子を思い浮かべる。
・聞きづらい、解きにくい箇所がないかを確認する。
・正答率は85〜100%くらいで、自信をつ  けさせられるか。
・楽しんで解くことができるシートか?
何度も巻き戻し、私の場合は少なくとも10回以上は観るので長時間かかる。しかし授業で生徒が集中して観ている姿や、細かく書かれた感想文を見ると報われる思いである。
●授業作品の相互鑑賞
大きな課題が終わるごとに、作品の講評会を行う。とはいえ、人前で発言することができない生徒もいるので、「課題調査」「鑑賞シート」などと称したワークシートを配布し、美術室内に展示された作品についてコメントを書かせる。
コメントは「良い点」のみ。どんな作品にもどんな人にも「長所」がある。悪い点が目につきやすいが、なるべく良いところを見つけだす力を養いたいと願うからである。



展示場所も、生徒に考えさせる。「自分の作品が美しく見える場所はどこか?」と投げかけると、最初は恥ずかしがり目立たない所に置いていた生徒も、イーゼルを引っ張ってきたり黒板や窓際・高い位置や目立つ場所に置くなど、各々が工夫をするようになった。



全員の作品について記入したワークシート自体も、「鑑賞能力」として評価する。制作で上手くゆかなかった・思うように進められなかった生徒たちには、より力を入れるよう促す。「美術は作品制作だけで点数がつけられる」と思いこみがちな子どもが多かったからである。
文章をうまく書くことができない生徒や、なかなか腰をすえた作業に取り組めない生徒もいる。そこで、記入欄の最後には投票欄を設けた。全員の作品を鑑賞した後、自分が特に良いと思った作品を選ばせる。その集計結果は、やはり努力をした作品に票が多く集まる。大多数の心を動かした作品、ということで制作の面での評価の参考にする。
用紙は回収後にコメントを切り取り、制作者に渡す。細かい作業だが、一人一人の思いを作者に届けることは大切である。また、他の生徒の評価を読んでいる姿は微笑ましく、ここで課題を成功させられたかどうかを教員は感じ取ることができる。
一人の教員が何百人もの生徒の作品を採点する上で、気持ちが揺れることがないともいえない(多忙な業務の中で、疲れることも)。また、課題を選び評価方法を作成しているのも結局はこちら側である。多くの目で見た上で結果的に教員の評価と相違がなければ、自信を持って提示することができる。

3.終わりに
美工研の中で「鑑賞教育」を採り上げていただき、本当にありがたく感じている。美術館に行く・名画を模写する・ゲーム等にも取り組んできたが、研究会を通して、さらに様々な方法があることを教えて頂けるのが嬉しい。
東京には美術館や博物館・多くの施設や情報が集まる。しかしそれを知らなければ、存在しないも同然である。時間や予算の制約は大きいが、鑑賞を通して、生徒の知識や向上心が高まるようこれからも努めたい。

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